Alice: Madness Returns

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不思議の国のアリスをモチーフにした三人称視点アクションゲーム。「Alice: Madness Returns」 は、前作である「Alice In Nightmare」 (「American McGee’s Alice」 とも呼ばれる)から実に約10年という長い年月を経て発売された続編である。

本作の主人公は、黒髪でダークな雰囲気をまとったアリス。彼女は現実世界で謎の怪物に追い詰められ、心の奥底にある「不思議の国」へと逃げ込む。しかし、かつては自分にとっての楽園であり、逃げ場でもあったその不思議の国が、何者かの手によって崩壊しつつあることを知る。アリスはその原因を突き止め、世界を救うため、再び狂気と幻想の世界を旅することになる。

この作品は、単なるゲームというよりも、ひとつのアート作品と呼ぶべき完成度を持っている。実際の制作過程では、多くのアーティストがコンセプトアートやイメージボードを描き起こすところから始められており、ビジュアルの設計に非常に力が注がれている。その制作資料をまとめたアートブックは、もはや設定資料集というより画集の域に達している。なお、このアートブックは日本語版も発売されたが、現在では非常に入手困難なレアアイテムとなっている。

そうしたアートイメージは、ゲーム世界にもしっかりと反映されている。プレイヤーはアリスとしてその世界を実際に歩き、眺め、体験することができる。ただ美しいだけではなく、陰鬱さや不気味さ、精神の歪みといったダークな側面もしっかり描かれており、妖しさと美しさが3Dの実体を伴って迫ってくる感覚は、恐怖と同時に強い感動さえ覚える。

ステージごとに風景は大きく変化し、それに合わせてアリスの衣装も変わっていく。定番の水色のワンピース、ゴシック調のレザー衣装などバリエーションは豊富で、ビジュアル面での楽しさは非常に高い。これを眺めているだけでも楽しい。やや古いタイトルではあるが、アリスの長い黒髪が風になびく表現は今見ても印象的で、その鋭い眼光と相まって、見る者の心を掴む。

アクション面では、アリスはボーパルブレードや胡椒を撃ち出すマシンガンなど、童話を歪めたような武器を駆使して戦う。攻撃だけでなく、多段ジャンプ、蝶に変身する高速ダッシュ、傘による防御といった多彩なアクションが用意されており、敵の攻撃をかわし、跳ね返しながら戦うスタイルが求められる。さらに、マップ内の仕掛けを利用した大ジャンプや、狭い足場を渡るプラットフォームアクション、軽い謎解き要素も随所に散りばめられている。

アクション性が高い分、難易度はやや高めで、特に傘ガードを使いこなせないと対処できない敵も存在する。そのため、ある程度の反射神経や操作への慣れが必要になる。また、1ステージあたりのボリュームが比較的長く、じっくり楽しめる反面、人によっては少し疲れると感じる場面もあるだろう。

本作は世界観、アート、物語、アクションが高いレベルで融合した稀有な作品であり、シリーズとしてさらに続いていく予定もあった。しかし、さまざまな大人の事情によって続編の制作は中止となってしまった。歴史に名を残すシリーズになり得ただけに、その点は非常に残念でならない。それでもなお、本作は今遊んでも強烈な印象を残す、唯一無二の体験を提供してくれる作品である。

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